CASE STUDY 事例
株式会社corteのAI薬歴作成サービス「corte」開発支援 生成AI / LLMソリューション

株式会社corte
代表取締役社長
升澤 裕介様

課題
「薬局から、日本を元気に!」を企業理念とする株式会社corte(コルテ)は、AI薬歴作成サービス「corte」の開発において、以下の課題がありました。
- 導入店舗の増加に伴い、利用方法が多様化し、モニター対応や新規導入先への迅速な対応など、運用・サポート面の負荷が高まっていた
- 少人数の体制で事業を立ち上げてきたため、AIに特化した専門人材が十分ではなく、開発体制そのものの強化が求められていた
- 表記ゆれや聞き間違いを減らすなど、認識精度の向上や、服薬指導の可視化・評価など、既存機能の改善に加えて機能拡張も並行して進める必要があった
ソリューション
AI薬歴の品質向上と開発スピードの両立を図るため、ログビーは以下のような開発・技術支援を行いました。
- AI薬歴で誤認識されやすい薬剤名を補正するロジックの実装
- 継続的な開発を支える基盤整備として、PythonからGoへのマイグレーションの対応
- 画像処理領域のPoCにおけるアルゴリズム設計・改善に関する技術的助言
効果
「corte」のプロダクト品質の底上げと開発スピードを両立するための開発・技術支援に貢献しました。
- 開発上の課題に対して、さまざまな観点から意見を提供、質の高い質問や提案を提供
- 速い対応スピードで、開発や検討を前に進めるうえで大きく貢献
- 薬局×AI領域での新たなサービス展開に向けたPoC(概念実証)の継続的な支援
インタビュー
株式会社corte(コルテ)は、「薬局から、日本を元気に!」を企業理念とし、生成AI×ヘルスケアの企業として2023年8月に設立されました。東京大学法学部を卒業した升澤様が代表を務める医療スタートアップ企業です。2024年5月には、国内初のAI薬歴作成サービス「corte」を開発し、この分野のトップランナーとして契約数を伸ばし続けています。導入店舗数は、2025年9月時点で2000店舗を突破しており、多くの薬局現場で業務効率化と薬剤師の負担軽減に貢献しています。今後も患者のため、医療業界のためになるAIサービスを展開していく企業です。
AI薬歴作成サービス「corte」の 開発背景

開発の背景には、薬剤師が患者と向き合う時間を十分に確保しにくいという、薬局現場の課題がありました。その課題に対する解決策として、患者との会話音声を取得し、薬歴を自動作成する仕組みを開発しました。
薬局業界では、2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」を契機に、対物業務から対人業務へという大きな転換が進められてきました。従来の薬剤師業務は、調剤や監査など、薬そのものを中心とした業務が主でしたが、こうした業務は今後、ロボットやAIによる代替が進む可能性があり、薬剤師にはこれまで以上に、患者と向き合い、患者ケアを担う存在としての役割が求められています。
世界的にも、WHOを含め、薬剤師が患者ケアに関与する重要性が強調されています。一方で、日本には約6万店舗の薬局があるものの、薬局本来の価値を十分に発揮できていないという指摘もあり、そのため日本の薬局業界では、2015年以降一貫して、対物中心から対人中心への転換が重要なテーマとなっています。
その中でも大きな負担となっているのが薬歴作成業務です。厚生労働省の発表によれば、薬歴作成には1日あたり約1時間25分を要しており、服薬指導に次ぐ大きな業務負担となっています。患者対応の時間を増やすためには、この薬歴業務の負担軽減が不可欠です。これまで薬局システムを提供する各社は、テンプレート機能やショートカット機能などで薬歴入力の効率化に取り組んできましたが、こうした方法では、実際に患者と交わした会話内容が十分に反映されないという問題がありました。特に、患者からのヒアリング内容や副作用、服薬状況など、個別性の高い情報はテンプレートだけではカバーしきれませんでした。
そこで、生成AIを活用し、音声から文字情報を取得して薬歴作成を支援する仕組みを導入しました。患者からのヒアリング内容だけでなく、薬剤師が説明した内容や、アセスメント、プラン、申し送り事項まで含めて、AIで整理・作成できるようにしています。その結果、すでに薬歴作成業務を50%以上削減できている薬局も出てきています。薬歴作成時間が削減されることで、1日あたり約45分程度の余裕が生まれ、薬剤師は1日に20~40人程度の患者に対応するため、患者1人あたりではおよそ1~2分程度、全体として患者対応時間を増やせる効果があると考えられます。
「corte」の 開発における課題
事業拡大に伴い、開発体制やサポート体制の強化が重要な課題となっています。導入店舗が増え、利用方法の多様化が進んでおり、それに伴って、モニター対応や新規導入先への迅速な対応など、運用・サポート面の負荷も高まっています。また、プロダクト開発面では認識精度の向上が重要なテーマとなっており、具体的には表記ゆれや聞き間違いを減らすことが求められています。あわせて、服薬指導の可視化・評価など、機能拡張も並行して進めていく必要があります。こうした複数の課題に対応するためには、開発体制そのものを補強していく必要があると認識しています。
当社はもともとベンチャー企業として少人数で立ち上げられており、当初は3人ほどで開発を進めてきました。そのため、AIに特化した専門人材が十分にいないことも課題の一つでした。より専門性の高いパートナーと連携し、開発力を強化していくことが必要でした。
特に重要なのは、サービスの品質と処理スピードの2点です。品質の面では、医薬品名の変換精度や、文字起こし後にSOAP形式へ要約する際の要約精度の向上が重要です。一方、処理スピードの面では、録音後の文字起こしから要約までをどれだけ短時間で出力できるかが重要です。出力までの時間が短いほど、薬剤師にとって使いやすく、満足度も高くなります。ただし、スピードと精度はトレードオフになりやすいという難しさがあります。そのため、今後の最大の課題は、スピードと精度の両方で最高水準を目指していくことにあります。
ログビーを選んだ理由
これまでにAIを活用し体験を重視したプロダクト開発に携わってきた実績を評価しました。専門性があるだけでなく、意欲的なパートナーを見つけることが難しい中で、そうした条件に合致していた点を高く評価しました。また、ログビーが医療領域におけるLLM活用に強い関心を持ち、今後この分野に取り組んでいきたいという意欲を示していたことも、参画を決める後押しになりました。開発力だけでなく前向きなコミュニケーションがとれる点も評価できます。複数の候補の中で比較検討して決めさせていただきました。
ログビーへの依頼内容
ログビーにはプロダクト品質の底上げと開発スピードを両立するための開発・技術支援を依頼しています。具体的には、AI薬歴で誤認識されやすい薬剤名を補正するロジック実装をはじめ、サーバーサイドの機能拡張と、それを継続的に回していくための基盤整備(PythonからGoへのマイグレーション対応)などを依頼しました。加えて、ユーザーからの不具合報告に対する迅速なバグフィックスなど、運用フェーズでの改善も含めて伴走していただいています。その他、画像処理領域のPoCにおけるアルゴリズム設計・改善の技術的助言など、新規テーマの検証も支援していただいています。
効果
開発上の課題に対してさまざまな観点から意見を出してもらえており、質問や提案の質が高い点を評価しています。また、対応のスピード面でも貢献が大きいです。単にAIエンジニアリングの領域にとどまらず、幅広い分野で多面的な依頼に対応していただいています。当社では、薬局×AI領域でさらに多様なサービス展開を進めていく必要があると考えており、その一環としてPoC(概念実証)にも継続的に取り組んでいます。そうした場面でも支援を受けています。具体例としては、処方箋をOCRで読み取り、機器へ取り込む取り組みに関する検討をしています。その際にも、意見や助言をいただいており、幅広い知見を持っていると評価できます。
今後の展望
今後の展望として、当社は薬局×生成AI分野でナンバーワンを目指す方針を掲げています。2024年4月にはAI薬歴サービスをリリースしており、これは薬局向けとして早期に展開されたサービスです。2025年には他社からも同様のサービスが登場し始めましたが、当社は現時点で契約店舗数や成長率の面で業界トップクラスに位置づけられており、第三者機関の調査でも、店舗数や成長率においてナンバーワンと評価されています。また、薬局向けAIサービスの領域では、クリニックや病院向けと比べて参入ベンダーがまだ少ない状況にあります。そのため、当社はAI専業で薬局領域に特化する数少ない存在として、先行的な立場を築いています。今後も、薬局×AI領域におけるトップランナー、いわば「ファーストペンギン」として、新しいプロダクトを次々に生み出していくことを目指しています。
こうした取り組みを通じて、デジタル化が遅れているとされがちな医療業界の中でも、薬局業界を先行してデジタル化させていきたいです。当社は、生成AIを今後の医療現場におけるインフラのような存在と捉えており、将来的には10年後には生成AIを使っていない人がいない状態になるという見通しを持っています。その中で、薬局業界がいち早くAI活用を進めることで、患者ケアの充実につなげたいと考えています。
